これからの公教育と学校事務の在り方
宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町 日渡 円 教育長
日渡教育長は、ご存じのとおり学校事務職員から県教委、そして教育長へという経歴をお持ちで、その見識と人柄で幅広い職層から多くの支持を受けておられる方です。著名な方の講演をじかにお聴きできるこの機会を心待ちにしていました。
質疑応答も含めて3時間にも及ぶ講演でしたが、どれもはっとさせられるような話の切り口に、どんどん引き込まれるように聴き入ってしまいました。
要点のみとなりますが、以下講演の概要です。
1 地方分権の流れ
(1)法や制度は進んできているものの、意識は従来のままになっている。
学校組織を時代にあわせて変えていくことが大切。
(2)自治体に人事権が移り、行政・市民が教育に対して今まで以上に関心を
持つようになり、学校へのプレッシャーが強くなる時代がくるであろう。
(3)現在学校事務職員は県の職員だという意識を持っているが、市町村職員
として働く意識、仕事のあり様に変えていかなければならない。
2 五ヶ瀬町の取り組み
(1)五ヶ瀬教育ビジョン
学校づくり・まちづくり・学校システムを変える委員会をベースとした17
の部会に、町民・行政・全教職員が集まり会議を行う。
(2)地域特性を活かす
学校統合をせず兼務辞令を発令し、教える内容によって最適な人数で授業
を行う。学校間交流のスクールバス運行管理と、教師の配置などについては
事務職員が担う。
(3)学校をコミュニティーの核に
町まるごと図書館・町の健康ソングの制作・独居老人と一緒の給食・学校
を役場の出先機関に(事務職員が対応)・地域通貨(ボランティア時間券)
などの構想がある。
(4)学校予算の自主決定権システム
予算編成権や予算執行権を教育課程に連動させることで、特色ある学校づ
くりや学校の自主性・自立性を確立する。議会には代表校長と事務職員が出
席する。
3 学校の意識を変える
(1)教育目標を達成するためには、ツールである「人・物・金・情報・時間」
を十分に与えなければならない。
(2)教育課程の3要素(目標・内容・時数)全部の段階に事務職員も携わる
ことが大切。時数のことばかりではなく、目標や内容に傾注すべきである。
(3)予算については事務職員が主張しなければならない。財政当局に対する
要求権にまでアプローチしてほしい。
「小さい町・小さい学校は不利」という固定観念を根底から覆す、斬新な取り組みの数々にカルチャーショックを受け、改めてこれからの学校事務の在り方、事務職員の進むべき方向について考えさせられました。
地方分権時代を迎え、学校事務職員が魅力あるまちづくり・魅力ある学校づくりのコーディネーターとして、行財政面でのリーダーシップ、とりわけ予算獲得の交渉をしていける力量を備えていかなければならないと感じました。
[小野塚]
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