大きなランドセルや制服のあどけない動きに目を細めながら、満開の桜に新しい始まりの喜びを感じていたところですが、早いもので間もなく5月も終わろうとしています。
わずか2カ月ほどの間に運動会を終えた小学1年生。初めての中体連に臨む中学1年生。身体はもちろん心も、あっという間に一回りも二回りも大きくなる子どもたちのたくましさには、今さらながら驚くばかりですね。
さて、話は一変するのですが、先頃開催された全国新酒鑑評会において、福島の22銘柄が金賞となり5年連続の日本一に輝いたという嬉しいニュースがありました。酒好きの戯言と思われるでしょうが、ちょっと一杯お付き合いください。
かつては灘の酒という時代。新潟の三梅に魅了されていた頃もありました。県内ではせいぜい会津のいくつかの蔵元かと。
それが今や、田村市の「あぶくま」や三春町の「三春駒」も、中通りも浜通りも、県内一円、全国の名だたる銘酒と肩を並べるほどの人気酒となりつつあります。
頑固一徹。それが酒造りの基本のように思っていました。蔵元、杜氏がどれだけ頑なにその味を守り抜いていくか‥‥伝統の継承と考えると、そこに酒蔵らしさを感じることがうま味であったり、いわゆる“通”ってものだったりと考えていたのかもしれません。
そんなに魅力的じゃなかった‥‥のは自分だけではなかったのか、日本酒はビールやウヰスキーなどにシェアを奪われ、危機的な状況になった時期もありました。独特の香りなどが好みを二分していたかもしれません。
特級、一級、二級の時代。その区分は製法などではなくて基本的に醸造用アルコールの含有量で、税金を徴するための制度だったんだそうですね。度数の高いのが特級、低いのが二級。だから醸造用アルコールを添加して等級を上げるというようなこともあったとか。イメージとして特級=高級酒でしたし、二級酒の方が安くてうまいという声も当然あったわけです。
それが、純米、吟醸、本醸造の時代に変わってきます。吟醸酒のさわやかで雑味のない味を知って、自分は日本酒のイメージが一変しました。醸造用アルコールを添加しない純米酒は、米本来のうま味を引き出してくれます。もちろん味や好みはそれぞれですが、飲む人にとって選びやすくなったのは間違いないでしょう。
蔵元も杜氏もやがて替わります。伝統を重んじつつも、時代に合った・ニーズに応える酒造りに変わってきたのでしょうね。それでもまだ福島の酒はそんなに魅力的とは感じなかった‥‥。
福島ではハイテクプラザが中心となって、酒米や酵母の開発を進めてきたそうですが、その研究がついに実ってきます。実はそれ以前から杜氏養成を目的に酒造組合と協力して酒造りそのものにも力を入れてきたのだとか。正に官民一体不断の取り組みなんですね。そうしてじわりじわりと‥‥。
新潟、山形、三重、山口、それぞれにモンスター級の銘酒があります。各都道府県にあります。福島は‥‥それほど突出していないんだそうですが、その代わり幅広く揃っているんだとも聞きます。そもそも酒蔵も多いのかもしれませんが、それも福島のアドバンテージ。じわりじわり、それぞれの積み重ねが功を奏し、大きな土台をつくり上げたのかもしれません。
脈々と受け継がれてきた伝統と、時代のニーズに合った新しい感覚との融合。蔵元や杜氏の真摯な学び合いと、官民連携による研究開発。それらが福島の酒づくりを支えてきたのでしょうね。
そして自分もその一人ですが、たくさんの地元ファンが、決して声高ではなく東北人らしく言葉少なにチビチビと味わいながら、何のかんの言いながらも広く地元の酒を育てているんじゃないのかなと思うわけです。
じゃぁ我々田村事務研は‥‥と、わざわざまとめるまでもありませんよね。
さて、今日はこれくらいにしておきましょう。
会長職を仰せつかり2年目を迎えました。相変わらず余計なことばかり言いますが、最後はおいしい酒が飲めるよう、じくあしをしっかり、ひとりではなくみんなで、互いにまなびあっていきましょう。
また1年間よろしくお願いいたします。
会長 橋本広治
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