今年の全体研修会は、会員3名と現職校長先生をパネリストに、「学校経営スタッフとしての学校事務職員の役割を考える」というパネルディスカッションでした。それぞれの実践などを踏まえながら、どのように学校経営に参画していくか、熱心に意見交換されましたが、予定の時間ではとても足りなかったようでした。
事務職員ひとり一人、地区事務研、また学校や市町村など、それぞれにさまざまな課題があり目標もあるわけですが、アプローチの仕方もその手だても正に多種多様かもしれません。しかし向かっているもの・目指すものには大差がないように思います。その焦点がぶれないような取り組みのために、さまざまな連携は極めて重要であり、情報交換をさらに深めながらすすめなければならないと感じました。
■学校経営スタッフとしての学校事務職員の役割を考える
○行政との連携における学校事務改善と標準化に向けて(企画推進委員会)
-学校事務部門の強化と学校事務職員の経営参画-
パネリスト:
郡山市立郡山第二中学校長 小野 義明 氏
田村市立古道小学校 石田 孝明 氏
会津若松市立一箕小学校 相田サダ子 氏
三春町立桜中学校 橋本 広治 氏
※以下パネリストごとに意見等をまとめました。
[橋本]はじめに 採用以来、小中、小規模大規模、いろいろな学校を経験。同じ公立小中学校なのに、異動のたびに事務のすすめ方が違い戸惑う。属人的なものになってはいないか。学校事務運営の不安定さをなくしていくためにも標準的な「学校事務運営計画」の確立が重要。そのための研修・研究の取り組みをどのようにすすめるかがポイント。
学校事務運営計画と研修 学校事務運営は事務職員の仕事という意識を変え、全職員の課題として取り組むべき。その主担当として学校事務職員がノウハウを詰め込んだ事務運営計画をつくっていく。そのためにも専門的な研修は不可欠。任命権者研修を補完する地区事務研の取り組みは、地域や学校間の連携を図りながらすすめやすい研修システムのベースとして期待できる。これまでに、カリキュラム研修、主題別研究、コンピュータ活用、インターネットなどさまざまな活動スタイルを試すことができた。いずれもトップダウンではなくボトムアップでの取り組みになったことで、活動に対する意識・意欲はかなり高まってきた。
事務研活動と連携 田村地区では次の3つの「連携」を柱に取り組んでいる。
・事務職員相互支援を目指す
3つの委員会による「まとめる活動・すすめる活動・つたえる活動」
→まとめる活動‥‥資質向上を目指す
→すすめる活動‥‥より一層の研究推進
→つたえる活動‥‥情宣と連携を図る
・教職員全体での事務運営を目指す
関連団体と連携しながら学校事務改善を提案
・広く学校事務の確立を目指す
活動を外部にも伝えて理解を得ながら応援団を拡大
まとめ バラバラにすすめてきた取り組みだが、地域単位で連携しながら標準化を目指し、それを拡大していかなければならない。学校事務職員だけの課題にしないよう、取り組みをコンパクトにまとめて外側に伝えて理解を得ると同時に、成果と課題をその時々に明確にして、それを積み上げていくことが大切。個の活動を広く地域全体のボトムアップにつなげ、質の高い学校事務機能を提供することによって、子どもの学びや育ちを常に支援できるようになる。それが「学校経営スタッフとして参画する学校事務職員の役割」ではないか。
[相田]はじめに 現在6校目。今年度から複数配置。湊地区4校の統合など、これまで3校の校舎建築に関わってきたが、湊小開校時に「会津若松市立小中学校事務標準」を反映させた校務分掌と「事務部運営計画」の作成を実現したかった。学校経営に積極的に関与しようとする学校事務職員を目指さなければならない。
事務部運営計画の実践 「車の両輪」に例えられる事務部と教務部だが、車輪の大きさが左右同じとは限らない。果たしてまっすぐ進むのか、理想と現実のギャップを少なからず感じる。「見えない学校事務」を「見える学校事務」にするため、教職員全体で取り組む協働体制をつくって、まず内側から車輪の大きさを同じにしていかなければならないと思った。事務部運営計画には教員が担当する事務も掲載し、その役割も明確にすることで、広範囲な学校事務への理解へ、教職員との連携へとつながる。そうして「開かれた学校づくり」から「開かれた学校事務づくり」を目指したい。
校内における連携 教職員との協働体制づくりを目指し、学校諸費の口座振替事務システム化をすすめて未納者を減らすなど、会計事務全般のシステム化をすすめた。また、学校経営方針に合わせた管理部グランドデザインづくり、教育課程と公費予算の裏付け、校内各種委員会への参画など、円滑な学校運営に向けた協働体制の構築を目指して取り組んでいる。
まとめ 学校経営への参画イメージは、大きく次の3つ。
・学校教育方針を把握する
・学校全体に目を向ける
・行政的視野を活かした総合的判断
これらによって学校経営をサポートしていくこと。参画の手だての原点は、小さな繰り返しを経営参画の芽として意識することから。経営参画のためのキーワードでもある財務、情報、評価とどう関わっていくか。
地教委、校長会、教頭会と連携し、ネットワーク化を強めながら属人的学校事務から脱却しなければならない。市町村単位の学校事務改善・学校事務環境整備・学校事務運営に関する諸規程の整備も重要。子どもや保護者の願いを反映させながら、待ちの姿勢ではなく提案型の事務職員として学校経営に参画することが、学校事務を変えていく原動力になるのではないだろうか。
[石田]はじめに 採用当時、学校事務職員配置はあまり進んでいなかった。新採用者に対する任命権者研修は皆無で、事務処理中心の仕事。それまで校長や教頭が事務を担当していたため、事務職員への理解と校内での実務研修が可能だった。研修は当時も事務研が中心だったが、それは今も変わっていない。12年度岩手大会発表以来、「コーディネーター、ゼネラリスト、シンクタンクの一翼を担う事務職員」を目指してきた。
学校で一人の立場から 久しぶりの異動。地区を越えたゼロからのスタートは、新鮮な発見の連続。異動先で「事務運営計画」が整備されていた。事務研の着実な積む重ねの成果である。これらをぜひ標準化へつなげたい。同業者が集い、自前の研修の場とし、自分の仕事を定義する場である事務研は、不思議な業界団体であるが、事務職員全体のレベルアップを図る機能を持ち、標準化やその方向性を示すことができる、先見の学校事務機能を提案できる事務職員育成のための、すばらしい組織。積極的な情報提供をしながら保護者や地域住民の理解と協力を求め、学校全体のレベルアップを考えて事務職員の存在価値を示し、校長会や地教委との連携強化を図り、学校教育への貢献を目指していくことが大切。
学校経営に参画する事務職員 岩手大会の提案から。
・コーディネーターとしての事務職員
住民感覚、保護者感覚、プロ感覚を備えること
→幅広い情報収集と分析で学校経営へ提案
・ゼネラリスト(総合職)としての事務職員
意欲、態度、関心を高め関連知識や技能のノウハウを取得
→教育と行政の視点で助言・提言
・シンクタンクの一翼を担う事務職員
ネットワークを活かした課題解決のシステム化
→今研究大会第1分科会の発表例
さらに最近では学校のトータルプロデューサーとして、質の高い学校事務の推進を目指す必要がある。
まとめ 個々の意欲や関心を高めるため継続した研修が必要だが、経験年数に応じてその目標を立ててはどうか。5年目までは実務修得。20代ではさらに判断処理できる能力を身につける。30代は学校全体の業務を見渡せる能力を身につける。40代は一般住民の感覚を加味し、専門職としての経験を生かした積極的な提案ができる能力を身につける。50代では、以降の社会情勢と学校事務の動向を予測し、学校経営を担い組織マネジメント戦略を展開できる能力を身につける。いずれにしても、研修する機会を広く積極的に求め、学校事務のプロとして幅広い技能を修得しなければならない。
[小野]事務職員との関わり 県教育庁義務教育課指導主事、主任管理主事、教育振興課主幹、教育振興課参事、教育指導領域総括参事等を歴任し、この間事務職員担当としてご尽力。平成12年度岩手大会発表時には指導助言者としてご指導ご支援いただく。
連携にあたって 連携にあたっては、その目的・方針を明確にしてすすめること。
・何のために‥‥だれとどんなふうに
・資質向上‥‥近隣の事務職員との連携
・教育向上‥‥校内全教職員との連携
・事務改善・標準化‥‥組織としての連携
また、次の点に留意すること。
・目標を共有する
・成果や課題を共有する
・方法を共有する
まとめ(指導助言)
1.学校事務部門の強化
(1) 研修の積極的な推進
個人・地区の研修、任命権者研修、自ら求める研修、教育そのものに関わる研修などさまざま。地域ぐるみの取り組みにしていくこと。
(2) 標準化の推進
地域の持つビジョンを支える学校事務運営計画を共有する。
地区の事務職員が同じ方向を向いてすすめる。
各地区の現状把握‥‥校長会や地教委へ提言していく。
2.学校経営参画
(1) 共通理解の推進
事務職・教育職相互の理解が必要。
一人職の職務内容や役割を全職員で理解する。
(2) 積極的な参画
各種委員会へ参画する。
実態の把握、課題の明確化を。
各種委員会へ参加しなくてもできることはある。
ひとり一人の取り組みそのものが学校経営につながる。
(3) ルーティンワークからプレゼンワークへ
提案型の取り組みも併用してすすめること。
経験の有無や年齢に関係なく、子どもたちのために何が必要かをよく考えること。
待ちの姿勢から提案型の取り組みへ。
(4) 事務運営計画
目で見てわかるものにしていく。
一人で難しければ何校かで連携して、それが地域でまとまればやがて広範なものになっていく。
点ですすめるのではなくて、線で面で広げていくこと。
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