ウォーキングしながらハッと感じた一瞬をカメラに収めることがこの上ない喜びになっています。そこに写り込んでいる季節ならではの風情に、季節の移ろいというものを一層強く感じるようになりました。
春夏秋冬、四つしかなかったこれまでの自分の季節感はお恥ずかしい限りですが、実はそれぞれに初・仲・晩という「三」の移ろいがあります。確かに十二の月ごとにも季節の違いがありますよね。ご存じのとおり二十四節気というのもあって、これは人の暮らしにも密接につながっています。
それをさらに三分割した七十二候というものがここ1・2年ちょっとしたブームです。計算するとだいたい五日間隔の季節の変化なのですが、歩いていても、撮り貯めていた写真をブラウズしてみても、なるほどそうだなぁと、たった5日ごとの移ろいを実感できるし、半年とか一年で追ってみたときのグラデーション的なイメージは、季節の変化というよりは“つながり”なんだという素晴らしさに感動さえ覚えるわけです。
クルマに頼っていては無理だし、それは特別な場所・出来事ではなくて、自分の生活圏内で繰り返されている、至極自然な自然の日常なんですね。
さて、今日もまたいつものように散策路に向かいます。梅雨明けも間近というこの時季の森は、木々の葉が鬱蒼と生い茂り意外に多少の風雨はどうっことありません。葉が落ちて幹や枝だけになる冬だって風よけにはなるし、雪もそれほど深くはないのです。そう思う・考えるから自然に足が向いていくんでしょうね。
そもそも木は高さも太さも、大きさ・枝ぶり、葉の形から何から何まで全く違うものです。森や林は並木とは違うので、大小さまざま、ばらばらに林立しながらそのかたちを形成しているのです。
一本の木では風が吹いたら寒くて仕方がないのですが、何本も何本も壁状になっていれば強い風をやわらげてくれます。壁だけでは、上を見上げると夏の強い陽差しや激しい雨には耐えられませんが、高さが違うから枝葉を自由に伸ばすことができて、それが重なりをつくって屋根のように覆ってくれます。直接は当たらないけれど、網の目だから水も光もきちんと通してくれるのです。そうして森は育っていきます。
森の中に入ると、樹木それぞれの特性が何となくわかって、それがとてもありがたく感じるようになります。大きい葉・小さい葉、枝ぶりの違い、早春芽吹く頃から落葉するまで、その表情をカメラで追いながら、あんたすごいねぇ‥‥とその一本一本に語りかけるような思いかもしれません。
それは森や木々ばかりではなくて、野の花も、雑草にだって、その日その日の表情があるから、ググッと寄ってシャッターを切るんですね。ついついムキになってしまいます。
ひとしきり森の中を満喫して街に出ます。振り返って改めてその森を眺めてみると、散策路の入り口・北側から見た森と一旦抜け出たこの南側から見る森とでは表情が全く違っていました。そもそも光と陰とが反対方向だし。それにしてもこんなかたちだったっけ?
遠くから眺める森は、鬱蒼とこんもりとした画に描いたようなひと山でしかなかったのに、意識して見てみると、その様子は全く違うのです。全体のフォルムはもちろん、そういえば北側は針葉樹が、南側は広葉樹が多い‥‥かな。奥の方にはコナラやクヌギ、こっちはサクラが多かったし、スギ林はあのあたりか。そうして意識するとやっと木々の一本一本と森全体とがつながってくるのでした。
森を見るときは、木々の一本一本が集まってできているんだということを感じなければならないんですね。事務研という組織がそうであり、活動・研究の成果もそうです。子どもの学びを支援するということも、何か特別なことではなくて日々のひとつ一つの取り組み、その積み重ねに他ならないのだろうと思います。
一方で、木を見て森を見ずという慣用句があります。細かいところにこだわりすぎていては、その本質や全体を捉えにくくなりかねません。事務職員ならではの細かい視点・観点ばかりでなく、森全体としてはどうなのかという大局的・客観的な感覚を忘れてはなりません。双方バランス良く考えるためには、自分とは違った感覚を取り入れることです。そこに連携の重要性・必要性があるのでしょう。
反対側からというもう一つの考え方も忘れなければ、だいたいの取り組みはまぁまぁうまくいくものです。
季節は夏の三・晩夏、二十四節気・大暑となりました。梅雨明けが待ち遠しい限りですが、暦の上では実はあと2週間ほどで夏が終わり秋を迎えてしまうのです。
七十二候は大暑の初候・第三十四候「桐始結花(きり はじめて はなをむすぶ)」です。桐の花は五百円玉硬貨にデザインされていますが、初夏に咲いた花がこの時季に卵形の実を結ぶのだそうです。さらに、その横では来年咲く花のつぼみがもうふくらみ始めるというのです。
間もなく秋だなんてちょっと気が早すぎるような気はしますが、実りの秋と言いますから、ここからしばらくは研修や研究をしっかりとすすめることにしましょう。小さくても成果を見出しながら、次につないでいくよう心がけることが大切ですね。
会長 橋本 広治
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