お彼岸。実家に行って墓参り。晩飯まで時間があったので、きっと夕焼けがきれいだろうと思い、久しぶりに裏山へ行ってみた。このあたりでは一番高いところだから眺めはいい。開放感たっぷり。夕陽を遮る厚い雲の端から強烈なオレンジ色の光線が放たれていた。
小さい頃は「夕陽がきれいだなぁ」なんて思っただろうか。あまり記憶がない。夕日に染まる田畑の様子とか、向かい側の竹やぶの様子とか、土蔵の白壁とか、あんちゃんや弟の姿とか家族とか、ホント目の前にあったものだけのような気がする。それだけ生活の範囲って狭かったのだろうと思う。でもそれはそれで生き生きとしていたのだ。
そんな目の前の風景というのは実はもう荒涼たるもので、当時の記憶を蘇らせるには相当な時間がかかるほどだ。ずっと引いてくるとこんな感じ。かつてはタバコ畑が広がっていて、極端に言えばサンダル履きで行けるくらいきちんと手入れされていたものだ。適度な勾配のこの道路でスケボーもしたっけ。
さらに下がっていくと、養蚕のために整備した桑畑が広がっているのだが、草が両側から伸びてうっそうとしたトンネルのようになっていた。桑の木そのものも伸び放題だ。あえてどこまでもどこまでも下っていってみたのだが、トンネルは何カ所もあった。夕暮れで薄暗いし、急に鳥が飛び立ったりして、恐怖心さえ感じた。
養蚕に前途を託し桑畑の開発をした。もう何十年も前の話だ。が、先細りの一途をたどり、養蚕もやめてずいぶん経っている。農業自体もやっていないから桑の木はもちろん畑の周りの草もそこまでの道路の整備も、つまり一山全部手がかけられていない。悲しいがそれがこのへんの農家の実態だ。その上に、まだ当時の開発費用を年間何万円も支払っているというのだ‥‥。
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