週の初めから飛行機雲が気になって仕方がない。小さい頃は飛行機なんてまるで別世界の話だったから、青空に白い線が描かれると、その日は何だか得したような、何かいいことありそうな気がしていたものだ。
福島にも飛行場ができて久しい。他県もそうだろうし、だから飛んでく飛行機そのものがものすごく増えたので、今は珍しくも何ともない。それでも小さい頃のそんな感覚は消えないから、飛行機雲を見るとついボーッと見てしまう。見てしまうけど、それほど何かを意識するものではない。
仲間が昨日海外へ飛び立った。つい先日までは正直なところまるで他人事だったのだけれど、週末「いよいよ出かけてきます」とあいさつに来てくれて、いやほんとうにいよいよなのだと思ったら、淋しさが一気に自分の胸を覆い尽くすような感覚になってしまったのだ。
他人事って、何も気にしていなかったわけではなくて、もう半年も前から事あるごとに「しばらくはこんな楽しみもお預けか‥‥」なんて思うようになってしまい、それがあれもこれもって思うようになるに従って、もう考えない方がいいやと思うようにしていたというか。そうしているうちに年度末モードに突入してしまい‥‥。
2年・3年なんてすぐだから、オレは軽く「元気でな、じゃぁまた」くらいの感覚でいたわけだけれど、いよいよとなると何か気の利いた言葉をかけなくちゃと思ったりするものだ。が、急にかっこいい言葉なんか見当たらない。「じゃ、いってらっしゃい、元気で」って、結局そんなありきたりの言葉だけで送り出してしまった。申し訳なかった。
8日夕方の便で旅立つことは知っていたのだけれど、もう月曜日から、空がとても気になるのだ。飛行機雲が気になるのだ。なのに天気は悪い。見えるはずがない。
昨日なんかいきなりの雪景色だ。これじゃ東京に足止めなんじゃないか‥‥なんて要らぬ心配してみたり。
足止めなんかよりも、これから新しい一歩を踏み出そうって日になんで晴れてくれないのかと、今日は晴れの日なんじゃないのかと、そっちの方が気になる。もしも何事かあったら困るではないか。ずっとずっとずーっと晴れ渡っていれば、地球を半周分じっくり眺めながら気持ちを整理しながら向かえるのに‥‥。あ、起きてないか。寝てるか‥‥。
今日の夕方、その研究会の会議を終えて帰ってくる途中、信号待ちの遙か彼方の空に飛行機雲をようやく見ることができた。もう彼の乗っている飛行機ではないけれど。
飛行機雲はただの白い線でしかなかったのだが、今回ばかりは線の先端の飛行機から、その小さな窓から、こっちを向いて手を振ってるんじゃないかと、あぁあの線のところを人がどこかに向かって飛んでいるんだなぁと、そんなふうに思うようになった。
彼らの新しい生活が始まる。代わり映えはしないけれどオレの生活も続いていく。いや単純に続くんじゃなくて、日々新しく始まるのだな。一日一日を新鮮な気持ちでスタートさせて、一日一日をしっかり締めくくらなければならないのだ、なぁんて思ってるうちに、飛行機雲はほどなくうっすらと消えていってしまうのだ。
まぁそんなもんだよなぁと、何か現実に戻ったような気になると、せっかく春を迎えたというのに、また秋から冬へ向かうところへ行くってかわいそうにとか、どんどん現実路線的なことが気になり出してくる。余計なお世話。自分の心配せいよ‥‥。
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