ハトが泣いてる‥‥声が聞こえる‥‥そんな気がした‥‥。
最初に見たのはちょうど10日ほど前だ。2階テラスの端っこでキョトンとしていたのだった。見ると足に輪っかがしてあって、つまり人に飼われてたようなのだが、集団からはぐれて帰れなくなったんだろう。
気持ちよく広い空をみんなで飛んでいたんだけど、猛禽類にでも襲われたんだろう、もうあんな空なんか飛びたくないと言っているようでもあった。
テラスに降りて端の方を少し歩いたんだけれど、修繕の必要なところを見回っていた我々を見つめ、でもおびえてるふうでもなくキョトンとしていたのだ。人が来ても逃げようとしなくて、このあたりに棲むようになっても困るから追い払うんだけど、ほどなく舞い戻ってきてポッポポッポ鳴いてるのだった。
特段悪いことをするわけではないし、いずれ飛んで行ってしまうだろうからと放っておいたんだけれど、昨日は「助けて!」という女性の配達員さんの声に驚いて行ってみると、軒下にある物置の屋根の角でじっとしているのだった。鳥肌が立つほど鳥が苦手な彼女はもうたいへんな騒ぎであるが、そうでなくても一箇所にじっとしているから排泄物も尋常ではなく、とにかく不衛生極まりない。まさかこんなことになるとは‥‥。
ネットで対処法など調べるのだが、どうもこれだというものは見つからない。ただ「ハトが留まる手すりなどにテグスなどを張り巡らして‥‥」というのが気になったのと、「黄色い紐を張るとやってこない」という情報があったものだから、黄色いすずらんテープを張り巡らしてみることにしたのだ。風に吹かれてピラピラして微妙にじゃまくさくてイヤになっちゃう作戦。安易‥‥。
夕方、不思議とハトは来なくなった‥‥。でも安心はしない。翌朝いないことを願って昨日はちょっぴり成功感を覚えたりして帰ったのだった。が、今朝はちょっとだけ場所を替えてやっぱりじっとしてた‥‥。声にこそ出さないが、ポッポポッポ嬉しそうに悲しそうに鳴いてるようだった。
シルバーから派遣されて周辺をきれいにしてくださっている人生の先輩に、何か方法はないかと尋ねた。それではと彼は動いてくれた。鳥に詳しい彼‥‥そうだ「鳥先輩」と呼ぶことにしよう‥‥鳥先輩は「鳥は後ろに下がれないから前から掴めばいいんだ」と言って、自宅から持ってきた網で捕獲した。が、その後逃げられたらしい‥‥。
ハトはそうやってこのあたりで生きていたんだけれど、鳥先輩につかまった際に、涙を流してもう明日は来ない明日は来ない、ポッポポッポと乞うて、それで逃げ延びたのかもしれない。その後夕方まで姿を見せなかった‥‥。
ハトが泣いてる‥‥声が聞こえる‥‥そんな気がした‥‥。午後からはあいにくの天気。この雨はハトの涙なのかもしれないなぁ。
三十数年前、井上陽水は何を想ってそんな歌を歌ったんだろうなぁ‥‥。
・ハトが泣いている(YouTube)
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